決めなかったから、残ったもの パリ在住アンティークショップオーナー Wakana
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更新日:13 分前

パリの街角で、[SAÏ] Saint Louis Parisという小さなアンティークショップを営むWakanaさん。
壊れたものや、少し色あせたものを手に取り、直せるところは手を入れながら、店を続けています。
実ははじめから目指していた場所が、ここだったわけではありません。
人との出会いや、そのときどきの流れに身を委ねながら、ゆっくりと歩んできました。
よく分からないまま、来てしまって
目的があったわけでも、言葉ができたわけでもなかったそうです。
フランス語は、ほぼゼロ。
「全然できなかったので、よく分からないまま来ちゃいました」と、Wakanaさんは言います。

フランスで最初に向き合ったのは、やりたいことよりも、生活するための「言葉」でした。
語学学校ではなく大学に入り、日本人は自分ひとり。
話し始めるまでに、1年半から2年ほどかかったそうです。

言葉が少しずつ出てくるようになった頃、ご縁がつながって、セレクトショップで働き始めました。
そのとき、趣味で作っていたアクセサリーを身につけていたら、店長がふと気づいて、声をかけてくれたそうです。
自分から売りに行ったわけではなく、作るつもりも、仕事にするつもりもなかった。
ただ、身につけていただけだったと言います。

日本では、なかなか起きにくい流れかもしれません。
でも、Wakanaさんのパリでの日々は、ずっとこんなふうに進んできたようです。
自分で決めた道というより、誰かが見つけてくれて、次の扉が、ひとつだけ開く。
その扉の前に立ってみたら、また次の景色が、ちゃんと用意されていた。そんな歩みだったようです。

これ、と決めて突き進むより、いくつかを同時に抱えながら、うまくいくものを少しずつ大きくしていく。
それは、フランスに来てから始まったことではなく、
「たぶん、こういう生き方しかできないんですよね」
そう話す声は、とても穏やかでした。
日本にいたら、出会わなかったもの
意外なことに、最初からアンティークが好きだったわけではないそうです。
フランスに来てしばらくは、アンティークマーケットにも、ほとんど興味がありませんでした。
きっかけは、アクセサリーのアイデア探し。

友達に勧められて通ううちに、パーツを集めるようになり、少しずつ、オブジェや時計へと広がっていきました。
壊れたものに惹かれてしまう理由
Wakanaさんの店には、壊れたものが多く並んでいます。
あえて選んでいるわけではないけれど、完璧な状態のものより、褪せた色や、経年の表情に惹かれてしまうのだそうです。
「綺麗すぎるものに、あまり美しさを感じなくて」
だから結果的に、壊れたものを手に取ることが多くなります。そして、直せたとき、止まっていたものが、また動き出す。
その瞬間に、ちゃんと感動があると言います。
未来は、決めない
「この先、何を目指してるかって言われると、ないかも」
途中でできた夢だったけれど、自分の好きな空間を作り、そこで仕事をすることは叶いました。

この店が少しずつ育てば嬉しい。
残せるなら、残したい。
そしてまた、必要になったら、そのときに手を伸ばす。
選ぶというより、重ねてきただけ。
流れに乗りながら、気づいたら、ここにいた。
今日も店の奥には、「直せたらいいな」が、静かに積み上がっています。
それらはきっと、また誰かの時間へ、戻っていくのだと思います。
写真・文 YURIE FURUYA
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