言葉をこえて伝える 西フランス在住 デザイナーAzumi AUGEREAU
- 友里江 古谷
- 4 日前
- 読了時間: 3分

今回の主人公はフランス在住のデザイナーAzumiさん。
日本とフランス両方のよさを互いに伝えるためのデザインを制作されています。
軽やかな一歩から始まった新たな地での生活で、最初は何もできなかったAzumiさんが
自分の強みを味方に日仏の架け橋のようなデザイナーになるまでのお話を伺いました。
もう一度デザインの世界へ
日本ではデザイン事務所で働いていたAzumiさん。
忙しくもやりがいのある日々だったけれど、ある時「少し休もう」と決めて退職しました。
不思議とその決断に迷いはなく、「また戻りたくなったら戻ればいい」と思っていたそう。

当時お付き合いをされていた今のご主人に誘われて軽い気持ちででフランスへ移住。
だめだったら戻ってくればいいという軽やかな一歩でした。
「君の将来プランは?」
フランスに来てしばらくした頃、ご主人からそう聞かれたあずみさん。
その言葉をきっかけに、自分の心をもう一度のぞいてみることに。
人のためになることをするのが好きで、その手段として“デザイン”を選んできたことを思い出し
異国の地で再出発をします。
伝える文化の違い
フランスでデザインをするようになって気づいたのは、伝え方の「引き算」が多いということ。
日本では、見る人が迷わないように情報を丁寧に並べることが多いそう。

確かに日本のポスターは一目でわかるようデザインや構成が多いなという風に感じます。
フランスでは、あえて書かないことが多く、“汲み取ってね”という余白がある。
実際に街中には一目ではなんのポスターなのかわからないようなアーティスティックなデザインがあふれています。
色の感じ方も違うそう。
日本で「和の色」として受け取られるトーンが、フランスではまったく別の印象になることもあります。
選挙ポスターひとつとっても、どこかアートのようで、見る人の“文脈の目”が前提。
わたしがわたしで出来ること
今では、日本の県や企業がフランスでPRをするためのデザインを手がけるようになったAzumiさん。
たとえば日本酒のフランス版パッケージデザイン。
フランス人の目に留まるよう情報を削ぎ落とし、ストーリーで伝えます。

「フランスにも日本にも住んでいるからこそ見える視点がある」
フランス人が思う日本、日本人が思うフランス。
その間を行き来しながら、ちょうどいい“橋”のような場所でつくっています。
手を動かして、観察して、形にする
ラフは必ず手で描くというAzumiさん。

いきなりパソコンで組むと、デザインがどうしても固くなると言います。
またクライアントと話すときは、言葉よりも相手の雰囲気をよく観察するそうです。
服装、声のトーンや空気感。
その人の「らしさ」を拾いながら、複数提案をされるそう。
「相手の好み70、自分の30」デザイナーとしての自分を保ちながら、誰かの世界に寄り添うことを大切にしています。
デザインを通して伝えること
分からないことは、分からないと伝える。
これはフランス暮らしでは、基本中の基本とも言えるべきところ。
でもはじめのころは、それがなかなかできなかったそうです。
生活をしていく中で言葉も文化も違う場所では、「分からない」と言える勇気が、信頼のはじまりになることを知りました。

誰かが合わせてくれる日もあれば、冷たく突き放されることもある。
言葉に詰まるときは、デザインで伝える。
Azumiさんにとっては作品が、もうひとつの言語になってくれるようです。
写真・文 YURIE FURUYA
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